【法律コラム】性犯罪の慰謝料
2013-07-21
強制わいせつ、強姦など女性に対する卑劣な犯罪にあわれた方の相談を受けたときに、弁護士としてもお答えしにくい質問が、犯人にいくら慰謝料を払わせることができるか、という質問です。
判例秘書という弁護士が利用する判例のデータベースがありますが、それによると行為自体による慰謝料だけだと百万円から数百万円でおさまるケースが多いようです。
もっとも、その根拠はよくわかりません。判決には事案によれば慰謝料としてはその額が相当であると書いてあるだけです。
慰謝料としてどれぐらいの額が相当なのかは交通事故の場合ある程度裁判所が参考にする基準が定まっていますが、性犯罪の慰謝料の場合基準が無く、完全に裁量になってしまっています。(怪我したり障害が残ったりしたことに対する慰謝料は別です。交通事故に準拠して考えることができます)
そして、裁判所が相当とする額は今までの判例を見ると、基本的に被害者感覚からすれば少ないといえると思います。
もっとも、性犯罪の場合多くの事案が示談や和解で決着しており、その場合の金額はむしろ加害者の資力と失う社会的地位によるところが大きいと思います。
このようなことから、性犯罪の加害者にいくら支払わせることができるかは、一律にはいえないというのが現状です。
また、裁判所も性犯罪に対する認識が変わってきているように思います。近年裁判員制度の導入もあり、性犯罪に対して刑事では厳しい処分が下されることが多くなってきたようです。
民事裁判でも、10年前の判例と比べて、同じような事案で認められる慰謝料が多くなってきたように感じます。
被害者による請求の積み重ねにより、裁判所も変わっていくのではないかと考えています。
文責:弁護士 北嶋太郎