【法律コラム】故意を争う事件

2013-10-13

刑事弁護をやっていると、事実に争いはないが、犯罪を犯す故意がなかったという事件は結構あります。

やるつもりでやったというのが故意です。わかりやすいのが殺人と傷害致死の違いです。人が死んでも殺すつもりでなければ殺人の故意がないので殺人としては無罪です。

刑法犯の大半は故意犯で、過失犯が処罰されるのは例外的です。

被疑事実を認めない場合を否認事件といいますが、否認事件の中で半分以上は故意を争う事件ではないかという気がします。

故意を争う事件というのは客観的事実については争いがないわけですので、捜査側のストーリーに沿った被疑者の供述をとることが捜査の主目的となりがちです。

「調書裁判」が批判されて久しいですが、未だに一度とられた供述調書の内容を公判で争うというのは相当の困難が伴います。

ということは、被疑者段階での起訴前弁護が重要ということです。

私の感覚では故意を争った事件で否認を貫いた場合半分くらいは不起訴になっている感じがします(数えたわけではないので、感じです)。

もちろん、それらの事件は私が被疑者と話していてやはり故意はなかったんだなと思うような事件でした。

うそをついているとやはり話に矛盾が生じますし、検察官も被疑者のうそを見抜く仕事のようなものですから、やはりばれます。

逮捕されるともう有罪だというふうに思う人が多いと思いますが、逆に真実故意がないなら話が一貫してますし、故意を推認させるような証拠も出てこず、検察官も公判維持がむずかしいと考えますので、不起訴になる可能性は一般の人が思うより高いです。

被疑者国選が付く事件では当然担当弁護士に相談することになりますが、そうでない場合は早めに弁護士に相談されることが必要だと思います。

文責:弁護士 北嶋太郎